対岸の火事ではない
ハリケーン「カトリーナ」による、ルイジアナ州、ミシシッピ州の被害が次第に明らかになってきている。現地の人的・物的被害が大きく取り上げられているのは当然だが、実は、日本にも大いに関係のある災害なのだ。
ミシシッピ川河口部は、日本など東アジア地域へのトウモロコシなど米国産穀物の最大の輸出基地だ。米西海岸からも輸出されるが、数量的にはマイナーである。何故かというと、穀物の大生産地は、ミシシッピ川およびその支流の中流・上流周辺にあって、生産物をはしけに積んでミシシッピ川を下って河口部で大型ばら積み船に積み替えて輸出するほうが、鉄道を使って西海岸まで運ぶより低コストだからだ。
「カトリーナ」によって、ミシシッピ川河口部の穀物輸出基地や航路に被害が出ている。しばらくこの基地からは日本向けの穀物輸送船が動かないことになる。
まず、整理してみよう。日本が大量に輸入する穀物は、トウモロコシ、小麦、大豆の3品だ。
このうち、小麦の米国主産地は西海岸寄りにもあるため、西海岸からの輸出で対応できるし、カナダやオーストラリアからも輸入できる。小麦は世界でもっともポピュラーな穀物であり、いざというときは、日本人の嗜好に合った品種にこだわらなければ、東欧など世界各地からも輸入することができる。
大豆はどうだろう。豆腐・納豆用の原料については、コンテナによる輸入が増えているので、ミシシッピ川河口部を通過しなくてもよい。植物油用原料が少し問題だが、現在はブラジルなど南米産の比率が高くなっており、なんとか対応できそうだ。
問題になるのはトウモロコシだ。トウモロコシについて、日本はそのほとんどを米国に依存しており、さらに大半がミシシッピ河口部の輸出基地から積み出しされる。採卵鶏、ブロイラー、豚の飼料の約半分を占めるトウモロコシの輸入ができなくなったらどうなるか。
ここからは仮定の話になる。数字はわかりやすく説明するために大雑把なものにしたので、正確な数字から多少の誤差はある。
日本のトウモロコシ流通在庫・・・約1.0ヶ月分
日本のトウモロコシ国家備蓄・・・約0.5ヵ月分
海上輸送中のトウモロコシ・・・約1.0ヶ月分
ということで、日本国内需要の手当の目処が立っているのは約2ヵ月半分だ。
ミシシッピ川河口部からパナマ運河を経由して日本までの輸送時間は、35日程度。
つまり、復旧までに1ヶ月以上を要すると、日本国内で需給問題が表面化してくる。
・・・{日本の手当済み数量-(復旧までの時間+輸送時間)}=?
家畜に給与する飼料がなくなるという可能性もゼロではないのだ。
実際には、他の輸出ルートを利用したり、他のトウモロコシ生産国からの緊急輸入などによって、大きな混乱は起きないと思われる。それでも駄目なら、鶏肉・豚肉の輸入を増やすかもしれない(ただし卵の供給は減少を余儀なくされる)。結局のところ、日本人は潜在的な危機を気にすることなく「食欲の秋」を楽しむのだろうか。
しかし、日本の食卓を支える土台が脆弱なことは確たる事実だ。中国が世界の胃袋となりつつある今(食糧輸出国から輸入国への転換)、日本はどうするのか。政権公約・マニフェストを見る限り、小泉・自民党(食料自給率45%を目指す)も岡田・民主党(政権獲得後10年で食料自給率を50%に引き上げる)も、食料問題を大きいものとは取っていないように思える(とくに、自民党の達成目標時期も明示せず、役所のレポートを書き写したような公約はお粗末だ)。経済力を背景にした「食料輸入大国」から脱するには、自給率を上げるか、畜産物(大量の穀物を必要とする)の消費を抑えるか、手段は限られている。
ちなみに、日本の食料自給率は下記のとおりである(平成15年度、概算)
米・・・100%、小麦・・・14%、大豆・・・4%、牛肉・・・39%、豚肉・・・53%、鶏肉・・・67%、鶏卵・・・96%、牛乳及び乳製品・・・69%、魚介類・・・57%
カロリーベース総合食品自給率・・・40%
(出典;農林水産省「食料需給表」平成16年9月)


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